胎便で先天性疾患の有無を診断!?~期待される新たな検査方法とは~
現在、新生児のスクリーニング検査は踵(かかと)からの採血で行われています。この検査により、先天性のアミノ酸代謝異常症や糖代謝異常症などの有無をチェックし、より早期の治療介入につなげています。
そんな中、東京大学の研究チームが、新生児の胎便から病気の早期診断を行う方法を開発しました。
そこで今回は、先天性疾患の新たな検査方法となるかもしれない胎便のタンパク質解析について、分かりやすくご紹介します。
疾患の早期発見が正常な発育につながる
新生児のスクリーニング検査とは、新生児マススクリーニングと呼ばれ、日齢4~6日後の赤ちゃんの踵から採取した血液をもとに複数の先天性疾患の有無を調べる検査です。
いずれの疾患も早期に発見して適切な治療を開始することにより、発症を抑制したり正常な発育に導いたりすることができます。
したがって、採血というストレスはありますが、赤ちゃんの健やかな成長を守るためには、生後間もないスクリーニング検査が必要とされているのです。
胎便に含まれるタンパク質に注目
今回、東京大学研究チームは、2019年10月から2021年3月に東京大学医学部附属病院で生まれた259人の新生児を対象に、胎便に含まれるたんぱく質を調査しました。胎便は、母親の体内で作られ、出生後24時間以内に排出される黒っぽい粘り気のある便です。
その結果、先天性の消化管や心臓の病気の有無により、含まれるたんぱく質の種類や量が異なることが明らかになりました。
具体的には、消化管や心臓の病気、染色体異常、感染症を持つ新生児と、健康な新生児の間で、たんぱく質の種類や量に顕著な違いが確認され、これにより病気の診断において採血よりも負担の少ない便を用いる検査法が期待されています。
より多くの子ども達の健康につながる
胎便を様々な方法で解析した結果、先天性の消化管疾患や心疾患を持つ新生児では、たんぱく質の種類や量の違いだけではなく、消化管が未熟である可能性があることも明らかになりました。
今回の胎便を用いた新しい検査法が、新生児に負担をかけずに消化管の状態を評価する手段になり得るだけでなく、新生児の消化管生理学や、先天性疾患の病態生理学の解明にも貢献することが期待されています。
今後研究が進み、さまざまな疾患を早期発見・早期治療することにより、健康な子ども達がさらに増えることが望まれます。
参考URL
『ヨミドクター』
https://yomidr.yomiuri.co.jp/article/20240902-OYT1T50008/?catname=news-kaisetsu_news
『東京大学』
https://www.h.u-tokyo.ac.jp/press/__icsFiles/afieldfile/2024/07/17/release_20240717.pdf
- MR(医薬情報担当者):編集部スタッフ:古谷祥子