岡崎朋美プロフィール

清里町の“お朋”が世界の“オカザキ”へ

北海道清里町─。
この町に岡崎朋美選手が帰郷するごとに、両親はその成長ぶりに目を見張ったという。

「高校でも帰ってくるのは夏休みでも２～３日、正月も２日間くらいしか居ませんでした。でも、本当に帰ってくるたびに、どんどん身長がのびていましたね」
と、父・元さんが振り返る。

身長だけではない。元さんには、娘の成長で忘れられないことがある。それは高校スケート部の夏合宿の仕上げに行われた、合宿先の中標津から清里まで、たった一人で、自転車で走って帰るという練習でのこと。車でも２時間はかかる、しかもいくつもの峠を越えるコース。高校生では、かなり困難な練習だったという。

「ちょうど、そのとき、車で迎えにいっていて、帰りは自転車で自宅まで帰るというから、しばらく伴走していたんです。
でも、一人で走っているわけだし、先生が見ているわけじゃないから、車に自転車を乗せてやるから、お前も乗れと、言ったんですが、本人が、やるって、言うんですよね。

あの根性はすごいよね。やれと言われたことは、なんだかんだ言っても、きちんと終わらせるんだよね。急な峠をいくつも越えて、４時間かけて最後まで走り切ったものなあ」
と、母、イセノさんと顔をあわせる。

イセノさんが語る。

「それで帰ってくれば、すぐに友達のところに行ってしまう。家にいるかと思えば、外で飼っている犬をシャンプーして、部屋の中に入れて、犬を抱いて寝て。それで、次の日には、その犬を放っぽりだして帰ってしまう。その繰り返しでしたね。私たちは、「大丈夫？」と目で見て、朋が「大丈夫！」と目で返してきて、おしまいですよ」

この風景─。岡崎選手が高校卒業後、憧れの橋本聖子（現参議院議員／五輪７回出場のスケート選手）を追って富士急行に入社後、現在にいたるまで、まったく変わっていない。

そして、五輪でメダルをとっての凱旋帰郷でも、故障で苦しんでいるさなかでの帰郷でも、元さんとイセノさんは、いつもどおりの笑顔で迎える。

取材を終え、牛舎や１年前に元さんが買った大型バイク、ハーレーダビットソンを見せてくれた。そのとき、
「中学までは牛の仕事で、まったく面倒見ていないし、その後は、親元から離れてしまったから、本当に話すことないから…、すみませんね。わざわざ来てもらったのに…」
と、イセノさんが語った。

しかし、親子の絆は時間や距離では、けっして計れないということを、あらためて強く感じた。

両親の深い愛情を受け、体も心も大きく成長した岡崎選手。自身５度目となる、バンクーバー五輪に向け、今また走りはじめた。